【書評】「ザ・ロスチャイルド」林千勝:大英帝国を乗っ取り世界を支配した一族の物語

こんにちはー。くまぽろです。

今回は、歴史的史実から現在の世界を読み解くための本を紹介します。

スポンサードリンク

「ザ・ロスチャイルド」林千勝

ザ・ロスチャイルド
著:林 千勝(はやし ちかつ)

★★★★★

世界の現実を知るために非常に重要な一冊
本書で歴史的事実として語られるロスチャイルド家によるお金の流れを理解していないと、どんなニュースも正しく理解できないと思います。

世界史の知識なんて「あ〜それ聞いたことある〜」くらいしかわからなかった私も、点と点が線になって、さらには面になって、どんな背景があるのかがわかるようになってきました。
日露戦争がこんな大きな絵の中に組み込まれている話だったとは…!

気になる方はぜひ読んでみてください。
あと、装丁がめちゃくちゃかっこいいです!

概要

イギリス王室、東インド会社、アヘン戦争、黒船、明治維新、日露戦争、マルクス、ロシア革命、南北戦争、リンカーン暗殺、大統領選挙、第一次世界大戦、連邦準備制度・・・
全部ロスチャイルドが背景にいた!

-本書の帯より引用

「歴史」は川の流れにたとえることができます。
川の水は、途中で消えたり、別のものに変わったりすることなく、川上から川下へ、そのまま今我々がいる現在地点に流れてきて、そこで留まることなく、そのまま下って果てしない未来という海へと流れていきます。
今現在、目の前に見えている様々な事象も、昨日、昨年、数年前そして更なる過去、上流へと遡ることができ、遂には源流にまで辿り着きます。
(中略)
本書は、「国際金融資本家」の「歴史」を、まずは、源流に遡ってロスチャイルド家の始まりとロンドン・ロスチャイルド家の繁栄について物語るものです。
この200年余、国際金融資本家が勃興し、興隆し、世界の歴史、各国の歴史に何らかの影響を与えたことは事実です。トランプが戦った2016年、20年の大統領選挙の位置づけも、今の日本の閉塞的な政治状況の原因も、国際金融資本家の「歴史」を無視しては本質を理解することはできません。日本が、あるいは各国がこれから歩むべき道を考える上で、これまでの200年余の国際金融資本家の「歴史」を踏まえておくことは欠かせません。

-本書のまえがきより引用

感想

上記のようにまえがきに書いてあるとおり、現代の世界はこれまでの歴史の上に立っているので、過去の経緯を知らないと正しく理解することができない。

ロスチャイルド家がすべてを操っているとまで言ってしまうと陰謀論になってしまうが、歴史的に世界に与えた影響が大きいのは事実であり、それをきちんと過去の資料から見ていくことは、現在の世界を理解するのに非常に役立つと思った。

本の構成としては、初代(富豪になった初代ってことかな?)マイヤー・アムシェル・ロスチャイルドから始まり、二代目からは主にロンドン家を中心に代を追っていって、どんな出来事があって、そこにロスチャイルドがどう関わったかっていう話をしていく感じ。

ユダヤ人である初代マイヤーは、ドイツのフランクフルトのゲットー(ユダヤ人収容区)で古銭商をはじめ、ヘッセン領主ヴィルヘルム公に気に入られる。
そこから宮廷御用商に命じられ、ヴィルヘルム公の資産運用も任され投資なども行うようになり、銀行家として大成していく。

彼の5人の息子はヨーロッパの各都市(フランクフルト、ウィーン、パリ、ナポリ、ロンドン)へ移り、それぞれが銀行業を営むが、まとまりはとても強固で、ロスチャイルド家全体として貸借対照表を作り、資産を管理していた。

この頃から、情報がお金に結びつくことをよく心得ていた。

ワーテルローの戦いでイギリスが勝利したことをいち早く知っていたのに、イギリス国債を大量に投げ売りし、みんながそれを見てイギリスが負けたと思い、超安値でなげうったところを、密かに別名義で買い漁っていた。
イギリス勝利の知らせが48時間後に首相官邸経由から市場に伝わると、大歓喜が沸き起こり、イギリス国債は暴騰
ワーテルローの戦いの前後5年でネイサン(初代マイヤーの息子でロンドン家の当主)の富は7万倍超になったと言われている。

7万倍ってどういうこと…(白目
しかし中盤〜後半を読んでいくと、こんなのは序の口だと思わされる。

国債を引き受けてどんどん富が積もっていく
ある程度の富豪になってからは、いろいろな事業に投資もするが、とにかく国債を引き受けることでさらなる莫大な富を生んでいるのがわかる。主要国がデフォルトすることはほぼないので、国債を引き受け続けるのは永遠に富が降ってくるようなものだろう。
また、先述のワーテルローのときのように、大量に保有していれば価格操作もできるわけだ。

中央銀行は国のものではない
中央銀行は民間人の所有物って知ってた?
要するに株を国が保有しているのではなく、民間人が所有している。
わたしは1年ちょっと前くらいに知って、ものすごく驚いた。

通貨を発行することができ、銀行の銀行である中央銀行を民間人が所有している。
つまり、通貨を発行することで生まれる利益(お金を生むわけだから、無から有を生んでいる)とそれを貸していることで得られる利子(これも無から有を生んでいる)がすべて最終的に中央銀行を所有している者に入っていくわけだ。
すべての国でそうかまでは知らないが、イギリスもアメリカも日本も民間所有。おそらくほとんどの国でこうだろうと思われる。

メディアの支配
情報が富に結びつくことを重々知っていて、巨富を保有している資産家は何をするか。
そう、メディアを支配することを考えるのだ。

自分のところに情報をいち早く届けてもらうだけではない。
ニュース配信を支配するために通信社に融資して育て、支配権を握る。
自動車王で反ユダヤ主義のヘンリー・フォードは、「1890年頃までは、ニューヨークの新聞はユダヤ禍の被害を受けなかった。しかるに今日では、事実上ユダヤ人の支配を受けない新聞はない」と嘆いたそうだ。

今日のメディアがどうかは言わずもがな。
他の国の情報を見ていると、まだ一部のメディアでは多様な報道がされているようだけど、日本のメディア支配率は絶望的に感じる。

日露戦争
日本が絡む話はやはり特におもしろかった。
学校で1904〜1905年と習ったなぁくらいは覚えていたけれど、ロシア革命とこんなに繋がっているものだとは。背景を今まで全く知らなかった。

戦争をするにあたって、日本とロシアのどちらも莫大な軍資金が必要なので国債を大量に発行することになるわけだが、この国債引き受けのどちらにもロスチャイルド家が大いに絡んでいる。つまり戦争が起きれば、両方に大量のお金を貸せて、その利子でものすごい儲けになるわけだ。
これは現代でももちろん同じことだと思う。

 
 
本書は、第一次世界大戦、ロシア革命あたりまでの話で、「つづく」となっていたので続編が出ると思われる。期待大。

読んでいて、やはり利子というものがおかしくないか?という考えが深まった。
物やサービスなどの供給と結びついておらず、無から有を生んでいる。勝手にお金の総量を増やしているわけだ。
以前は利子というものを当たり前にあるものだと受け入れてしまっていたけれど、一度あれ??と思い始めたら、仕組み的に崩壊している気がしてきた。
考えごたえのあるテーマだな。

以上!