【書評】「米中もし戦わば〜戦争の地政学」ピーター・ナヴァロ

『米中もし戦わば 戦争の地政学』
著 : ピーター・ナヴァロ
訳 : 赤根洋子
解説 : 飯田将史

米中もし戦わば

いままで全然読んだことのない、政治系の本を初めて読んでみた。

きっかけは、KAZUYAさんという、政治系の動画をアップしているYoutuberさんの動画で紹介されていたこと(わたしが見てるのはニコ動でだけど)。
KAZUYAさんの動画はちょくちょく見ていて、論理的だし、若い人にも政治に関心をもってもらえるような動画の作り方がすごく上手でおもしろい。

その中で北朝鮮問題などに触れたときに、出てきたのがこの本。中国や韓国などに対しても不安を持っていたので、読んでみよう、という気になった。
結論としては、
今のままじゃかなりまずいじゃん!!!
と思った。


要約すると、

・中国は現状変更意図(要するに、領地を侵略する意図)を持って、軍備を急速に拡大しつつ、アジアの周りの国々の領地にちょっかい出してます

・中国としては、海上封鎖されるのが嫌なので、第一列島線や第二列島線の各所にある米軍基地がめざわりで、そこを突破して自由に船が航行できるのを目指してます

・アメリカは、アジアの各国と軍事協定を結んで、軍を日本や韓国やフィリピンなどにも置いて、中国と均衡を保ってきました

・でもアメリカは冷戦後、ロシアとの条約で軍縮してきました。米軍が世界の他のところの戦争に参加することも、アメリカ国民は自分たちの税金が使われてるので、だんだんそれに反対する声も増えてきてます

・中国は共産党の独裁体制なので、意思決定や実行がスムーズに行われ、軍拡だけでなく、地図やメディアや法律などなど多角的に使って、中国の国力を強くしています

・対するアメリカは、民主主義のため、いろいろな利害を持った企業、団体などが対立して、なかなか意見がまとまらず、中国の平和的でない台頭に対して、一枚岩ではありません

・またアメリカだけでなく、他の西側諸国も、経済的に中国という世界最大の経済圏を無視できないので、むしろ中国の利になるようなこと(軍事に転用できる技術の漏洩とか)をしています

・このままいくと、そのうち中国がアメリカの軍事力を抜いたら、戦争を仕掛けるかも・・・

読んでくと、どんどん怖くなる内容・・・。
まじこれどうすんの。
日本は特に地理的に近いので、ほんと気が気じゃない。


中国の行動については、特にスカボロー礁の話が印象的だった。

もともとフィリピン領のスカボロー礁に、2012年に中国漁船団が現れ、不法に珊瑚やサメなどの輸出入禁止生物を大量に積み込んでいることがわかった。フィリピン当局が中国人漁民を逮捕しようとしたところ、中国海警局の監視船が現れてこれを阻止し、睨み合いの状態になった。
そこでアメリカが仲介し、「中比両国は当該地域から撤退し、平和的解決のために交渉する」ことが決まった。
のに、
フィリピンは取り決めを守って撤退したのに対し、中国はそのまま居座り続け、勝手に実効支配するようになった。

は??
そんなこと今の時代にありえるのか、と思ってしまった。

もっと世界は法で治めされているという幻想をもってたよ。平和脳ですみません。
そんなことしたら、なんでもありじゃん。おまえのものは俺のもの、じゃん。武力が明らかに格差あると、こうなっちゃうんだね。


民主主義だからこその弊害が出てしまっていることも、とても興味深かった。そこが一番根が深そうだし、難しそう。
みんなが中国に対して同じ目線を持たずに、いまの利益を求めてばかりいると、最終的には戦争という誰も望まない結果になってしまうかもしれない。


本では、最終的に対抗策についてもまとめている。
それは基本アメリカ目線の話なのだけど、日本として何ができるのかという話も、最後に防衛省防衛研究所の方が解説している。

軍事や政治の話は大きすぎるけど、個人としては「中国経済に乗っからない」ということだけは意識してできることだと思った。つまり、中国の製品を買わないようにする、ということ。中国経済が伸びてるから、どんどん中国は軍拡できちゃってるので。
なんでもかんでもそうはできないかもだけど、これからは選択肢がある場合には中国製品じゃないほうを選ぶようにしたいな。

本の内容は、憶測だけではなく、いろいろな事実から論理的に意見を展開して、とてもおもしろい。
今までの歴史的な経緯とか、全然無知なわたしでも読めて、めちゃくちゃ勉強になるので、とてもおすすめです。