【書評】「さよならに反する現象」乙一:恐ろしくて切ない出会いと別れの短編集

こんにちはー。くまぽろです。

今回は小説。短編集です。
乙一の新刊が出てるのを、ちょうど本屋さんに行ったときに発見しちゃったので買いました。

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「さよならに反する現象」乙一

さよならに反する現象
著:乙一(おついち)

★★★★☆

乙一さんの新作の短編集です。

「哀しみの先には何があるのだろうーーー」
というキャッチコピー。

装丁や中身のレイアウトも凝ってます。

「作家生活25周年て書いてあるけど、乙一さんて何歳?」
と思ってWikipedia見たら43歳でした。

同い年くらいの感覚で読んでたけど、少し年上だったのか。

山白朝子(やましろ あさこ)や中田永一(なかた えいいち)の別名義でも小説を執筆しているらしい。
知らなかった!

あらすじ

私が家政婦を務めるのは、
死んだ人間が来る家ーーー。
「家政婦」

心霊写真に写りたい幽霊が出会ったのは
心霊写真を作ることが趣味の青年だった。
「悠川さんは写りたい」

リストラされたことを言えない父親の、
家族に秘密のアルバイトとはーーー。
「そしてクマになる」

イヤミの邸宅ではたらいていたカラ松が
死体となって発見された。
犯人はこの家の中にいる!?
「なごみ探偵おそ松さん・リターンズ」

星野源「フィルム」にインスパイアされて
生まれたショートショート。
「フィルム」

–本の帯より引用

感想

この短編集すき。おもしろかったです。

わたしの乙一との出会いが「ZOO 2」だったので、その印象とは完全に違うポップさが、なんだかすでにおもしろかったです

わたしの乙一歴はこんな感じ。

『ZOO 2』
乙一を初めて読んだ短編集。大学生のころ。
当時付き合ってた彼氏が『ZOO 1』を買っていて、おもしろいって言ってたのでたまたま見かけた『ZOO 2』を買ってみたら、『神の言葉』っていう話が怖すぎて戦慄
ほとんどホラーを読んだことなかったので、なんでこんなものを読んでしまったんだと思いました。

なのに、『落ちる飛行機の中で』みたいな、非常事態なのに登場人物があっけらかんとした話もあり、困惑。
今回の『さよならに…』は、この『落ちる飛行機の中で』のポップさに近いと感じですね。

『ZOO 1』
ZOO 2が怖すぎたくせに気になって1も読んでしまう。
『SEVEN ROOMS』が『神の言葉』とはまた違う怖さで泣きそうになる。なんで読んだし。
でも今でも覚えてるくらいだし、怖かったけどおもしろかったんだな。

乙一の怖い話は、質感がしっとりしていて気味が悪いって感じのものが多いという印象を持ってました。

あとは、『夏と花火と私の死体』『暗いところで待ち合わせ』『GOTH 夜の章』『GOTH 僕の章』も読んでます。

『暗いところで待ち合わせ』もかなり好きだった!
これぞ白乙一!?
(乙一の怖い話を黒乙一、怖くないむしろ温かい話を白乙一、って言うと聞いたことがあります)

『失はれる物語』は短編集全部ではなく、『失はれる物語』だけ読んだ記憶があるんだけど、なんでそんな読み方してるんだろう。うーん、覚えてない…
 
 
今作を読んで、こんないろんなバリエーション書けるなんて器用だなぁとまず思いました。

最初の話が『そしてクマになる』っていうタイトルで、くま好きとして心の中で「くまー!」と思いながら読んでました。笑
ハラハラもしたけど、温かい話でじんわりきました。
わりと社会的で現実的なトピックなのに、こんな話の展開になるとは思わなくておもしろかったです。

『なごみ探偵おそ松さん・リターンズ』ってリターンズってついてるのに、前作があるわけじゃないのかな。
「わたしは何を読まされているんだw」って感じでニヤニヤしながら読んでました。笑

『家政婦』『悠川さんは写りたい』の2つが特に好き。
話の設定は非日常的なんだけど、キャラの朗らかさに安心してしまう。
そのギャップが、なんていうんだろう、話全体をかわいくしているというか。

Wiki見てても思うけど、やっぱ短編集が多いよね?
こういうアイディアがたくさん湧くタイプの人なんだろうなぁ。

他もまた読んでみたいです!
以上!