こんにちはー。くまぽろです。
今回は政治関連。前から気になってた、中国の浸透工作についての本です。
「Silent invasion 目に見えぬ侵略:中国のオーストラリア支配計画」。
ものすごい量の取材をして、この本をまとめてくれた、著者のクライブ・ハミルトンさんに感謝。
サイレント・インベージョン〜目に見えぬ侵略
著:クライブ・ハミルトン
監訳 (その他):山岡 鉄秀(やまおか てつひで)
翻訳:奥山 真司(おくやま まさし)
★★★★★
現在は、米中の覇権争いが日々報じられる世の中。
香港も国家安全維持法が可決されて民主派が大量に逮捕され、ウイグル人を強制収監しての非道の数々も報道されています。
日本も尖閣諸島を虎視眈々と狙われていて、他人事ではないですね。
明らかに平和的でない膨張を続ける中国共産党は「組織的に浸透工作をしている」ということに興味を持って、この本を読むに至りました。
取材に裏付けされたエピソードがたくさん詰まっていて、国際情勢や中国について知りたい方は必見の本です。
概要
おそるべき影響力工作の全貌が白日の下にさらされる、禁断の書。
◎原著は大手出版社Aleen&Unwinと出版契約を結んでいたが刊行中止、その後も2社から断られた。
「(本書の)販売中止を決めた自粛は自己検閲だ」(フィナンシャル・タイムズ)と物議をかもし、中国共産党の海外工作ネットワークをすべて実名入りで解明した、執念の本格研究、ついに全訳完成!
◎オーストラリア政財界・メディアに介入した手法は、日本にも使われている!
「中国が他国をどのように影響下におこうとしているのかを知りたければ、まず本書を読むべきである。」
(ジョン・フィッツジェラルド教授の推薦の言葉)
◎「世界各国のモデルになるのでは」とされる、ターンブル政権の外国人・企業からの献金禁止の法制化や「スパイ活動」の定義拡大の動きに本書が先鞭をつけた。
「中国による浸透工作が半ば完了しつつあった時、強烈なウェイクアップコールとなったのが、ハミルトン教授による本書「サイレント・インベージョン」である。
本書はオーストラリアを変え、アメリカにも大きな影響を与えた。」(監訳者解説より)
—Amazonより引用
内容のまとめ
- 愛国教育の徹底
愛国教育自体は悪いことではないが、国への愛と、中国共産党への愛をごっちゃにし、共産党を崇めるように教育している。 - オーストラリアにいる中国人学生たち
上記の愛国教育を受け、オーストラリアの政策や要人の発言、大学の方針などで中国批判が出たときに、猛烈に反対の声をあげる。 - 華僑
オーストラリアに住む華僑は、財を成したら、オーストラリアの政治家に献金して、政治に影響を与えていく。これによって中国共産党の代弁者のような政治家を増やした。
華僑は、澳洲中国和平統一促進会、澳中友好交流協会などの組織で役職につき、オーストラリア内の華僑を束ね代表するポジションをとる。
黄向墨、周澤栄、祝敏申、楊東東など。 - メディアとの取引
中国の中央宣伝部とオーストラリアの主要メディアは、メディアに資金を提供することと引き換えに、中国のニュースストーリー(もちろん中共にとって都合いいもの)を掲載することで合意した。 - エネルギー関連企業の買収
中国国営企業の国家電網公司は、オーストラリアのエネルギーネットワークのかなりの部分を保有している。冗談抜きで、有事には電気や通信が遮断される自体が起き得る。 - ドライスデール報告書
「オーストラリアの経済的繁栄は中国の経済面での成功にかかっているので、中国からの投資を拒否したり制限したりすべきでない」と主張する提言。
中国が、共産党が統制する独裁体制にあり、政治面での影響力や地域での侵略面での支配のために、投資を行うことがありうる、という事実を無視している。 - スパイや情報提供者の推測人数
オーストラリアには、スパイ1000人+情報提供者(人数不明)。
アメリカには、スパイ25000人+情報提供者15000人。 - 機密情報を盗む
賄賂をもらって機密情報を流したり、元々中国共産党の息がかかった人がオーストラリア政府の機密が知れる職場で働くよう言われたりしていたのが、発覚している。 - 大学や研究者への浸透工作&技術を盗む
中国の人民解放軍と密接につながっている研究者たちと共同研究をしている、オーストラリアの大学の研究者たち。「たいまつ計画」と呼ばれ、海外のテクノロジーと研究の成果を横取りすることに焦点を置く。 - 孔子学院
表向きは、中国語や中国文化を教える学校だが、実態は中国共産党の意に沿ったプロパガンダ機関。オーストラリア国内には全部で十四の孔子学院が存在している。
(現在の状況を調べたところ、2019年にオーストラリア内の孔子学院は閉鎖が決定された。日本にも同じくらいの数の孔子学院あり。アメリカでも閉鎖の動きが進んでいる。) - 中国国内で進む監視社会
監視カメラ、中国国内に1.79億台。深圳市では、赤信号を渡ったら大スクリーンに顔が映し出され、警告が鳴り響くらしい。違反行為は記録され、社会信用システムの信用スコアが減点される。 - 政治政党を作り出す
以下、本文そのまま引用。これ日本でも確実に行われていると思う。…これには「仲介人層」(覇権国と自分たちの利益が合致していることを自覚しているビジネス層)を育てることや、覇権国側の望む動きをする政権政党を作り出すことも含まれる。この戦略の長期的な成功のために必須となるのが、一般大衆の力を削ぎ、その世界観を変えることであり、そうすることで覇権国側の支配の必然性やその魅力を受け入れさせることができる。このために覇権国側は知識人たちを含むエリートたちを取り込もうとするのだ。
感想
「この本を書くのに、一体何年かかったんだろう…?」
まず、そう思ってしまうくらい、取材によって積み上げられた事実の量がものすごいです。圧倒されて、めちゃくちゃ敬意が湧いてきました、著者の方に対して。
わたし、この本を2020年の年末から読み始めたはずなんですが、いま2021年3月8日…笑。ちびちび読んでいたとはいえ、こんなにかかるとは思ってませんでした。
この本は、オーストラリアで発売されたのが2018年(邦訳されたのは2020年)。
オーストラリアは近年明らかに中国の驚異に目覚めた行動をとっていますよね。
新型コロナウイルスの現地徹底調査を求めたことに対して、中国が経済制裁を発動して、牛肉の輸入停止をしたり大麦に高関税をかけたりしていますが、オーストラリアは屈せずに断固として戦っています。
日本の政治家を見てても、明らかに日本の国益に反して中国の代弁をしているような人が少なからずいますし、脅威を認識する必要があると思います。
こういうのって「悪意」を持っている側が常に強いですよね。
国の話でなく、人の犯罪を思い浮かべると、より想像しやすいと思うんですが、悪意があって、他人を害そうとか物を盗もうとか考えてる側がどうしても先手を取ることになるじゃないですか。普通に善良な人は、そういう発想をあまりしないので、他人がそんなことをしてくると思ってない。だからしっかり備えていない。
国の話でも同じで、侵略の意図を持って、向こうの立場を一方的に押し付けてきているわけですから、いろいろな可能性を想定して防がないといけません。
浸透工作が進み、完全に乗っ取られてからでは遅いですから。。
非常に勉強になる、考えさせられる一冊でした。
昔は政治に1mmも興味がありませんでしたが、知れば知るほど(不謹慎な言い方かもしれませんが)面白いです。
少しでも多くの人が、この脅威を認識してくれればと思います。
以上!