【書評】「テミスの剣」中山七里:人を裁く権力を持つということ

こんにちはー。くまぽろです。

前から気になっていた中山七里さんの本を初めて読みました。
(Twitterの#読了タグやAmazonのおすすめなどで知ったのだろうか)

『テミスの剣』を紹介します!

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「テミスの剣」中山七里

テミスの剣
著:中山 七里(なかやま しちり)

★★★★☆

それは君が未熟だからなのではなく、人間という存在自体が未熟だからなのだーーー、と黒澤は答えた。

人間の犯した罪を同族である人間が裁こうとする行為そのものが不遜であり、傲慢なのだ。本来、人を裁くのは神の仕事ではないのかねーーー

(本書から引用)

タイトルになっているテミスというのはギリシャ神話の神様で、右手に剣、左手に天秤を持っている法を司る女神です。

人の罪を暴く刑事や検事、それを公正な目で審理する裁判官が間違いを犯してしまったら、というお話です。

あらすじ

昭和五十九年、台風の夜。
埼玉県浦和市で不動産会社経営の夫婦が殺された。

浦和署の若手刑事・渡瀬は、ベテラン刑事の鳴海とコンビを組み、楠木青年への苛烈な聴取の結果、犯行の自白を得るが、楠木は、裁判で供述を一転。
しかし、死刑が確定し、楠木は獄中で自殺してしまう。

事件から五年後の平成元年の冬。
同一管内で発生した窃盗事件をきっかけに、渡瀬は、昭和五十九年の強盗殺人の真犯人が他にいる可能性に気づく。
渡瀬は、警察内部の激しい妨害と戦いながら、過去の事件を洗い直していくが……。

Amazonより引用

感想(ネタバレなし)

まったく内容を知らずになんとなくで選んだのですが、なかなかに重い話でした。

ストーリーとしては面白いし、文章も読みやすくてすぐに没入できるのですが、主人公が最初の方で取り返しのつかないことをしてしまうのが、読んでいて辛いです。

世の中にはたしかにどうしようもない犯罪者もいて、刑事がそれと渡り合えるように身構えるのはわかるんですが、「目には目を」じゃないけれど明らかにやりすぎで…。

『エルサレムのアイヒマン』を読んだ直後なのもあって、自分の倫理観に従うことの大事さをまたも痛烈に感じる話でした。

特に、組織を守るために警察やらなんやらが真実を握りつぶすなんてこと、現実でもたくさんあると思うので、これ全然フィクションじゃないよなぁと思ってしまいます。

でもちゃんと苦しいばっかりではなく、ストーリーが進むにつれて新たな発見だったり推理だったりが読ませるので、後半はどんどんミステリーとして面白くなりました。
 
 
他の本で、この主人公の渡瀬さんが出てくるシリーズや、裁判官の高円寺静の話などもあるらしく、特に『静おばあちゃんにおまかせ』がちょっと気になります。

また別の本もそのうち読んでみたいです。
以上!