こんにちはー。くまぽろです。
最近はどこでもアルコール消毒をしている人を見かけますが、必要以上に細菌を殺すことは人間の体にとって良くないのでは?という疑問から、この本を手に取りました。
『あなたの体は9割が細菌』を紹介します。
「あなたの体は9割が細菌〜微生物の生態系が崩れはじめた」アランナ・コリン
あなたの体は9割が細菌〜微生物の生態系が崩れはじめた
著:アランナ・コリン
訳:矢野 真千子(やの まちこ)
★★★★★
腸内細菌が人間の健康にどう影響しているのか、について語った本。
タイトルの通り、人間は自分の遺伝子から作られたものだけでできているのではなく、細菌やウィルスとの共生関係で成り立っているよ、という内容です。
内容紹介
かなり内容が濃くておもしろかったので、以下に書き出したいと思います。
けっこう削ったつもりなんですが、それでもボリュームが多い。。
でも、後日の自分の備忘録にもなると思うので。
二十一世紀病
・ペニシリン(抗生物質)の発見により、それまでは切り傷などから菌が入り、膿んでそのまま死に至るということがしょっちゅうあったが、それは現代では稀なことになった。
そのため、感染症等で死ぬ人は激減したが、その代わりに著者が言う「二十一世紀病」が激増。
花粉症や食べ物のアレルギー、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、1型糖尿病、狼瘡(全身性エリテマトーデス)、関節リウマチ、自閉症などの自己免疫疾患が、経済的に豊かになった国では続々と増える。
・著者自身の経験もあり、抗生物質によって腸内細菌の組成比が乱れることで、さまざまな二十一世紀病が起きているのではないか、という仮説。
多くの病気で関連があることがわかってきた。
・自閉症
特定の菌種に効く抗生物質の投与で、自閉症の症状が驚くほど改善する。ただし、投与をやめると戻ってしまう。
・精神への影響
細菌は精神にも影響を与える。
統合失調症、強迫性障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、トゥーレット症候群の患者に、トキソプラズマ感染が見つかることが増えている。
交通事故を起こした運転者は、そうでない人に比べて3〜4倍トキソプラズマ感染が多いというデータも。
・抗菌剤入り製品への懸念
石鹸などに加えられていることの多い抗菌物質のトリクロサン。水の中の細菌を殺し、人体にも入り込む。75%の人の尿からかなりの量が検出されている。
尿中のトリクロサン濃度とアレルギーの重症度に明白な相関関係がある。体内にトリクロサンが多くあるほど、花粉症などのアレルギーを起こしやすい。
トリクロサンが感染症を誘発することを示す証拠もある。
肥満
・肥満もものすごく増えた。食生活を気にする人は増えているのに、増加の一途。
地球上の成人は三人に一人が過体重(BMI25〜30)で、九人に一人が肥満(BMI30超え)。栄養不良になるような貧しい地域も含めた全世界の平均値でこれ。
南太平洋の島国ナウルでは、成人のうち肥満70%、過体重23%で、まともな体型は7%しかいない。
欧米でも三人に二人は過体重、そのうち半分は肥満。
・抗生物質を使いだしてから肥満率も上昇しはじめた。
そしてそれ以前から、食肉用家畜を育てるのに、抗生物質を餌に混ぜている。抗生物質を使った方が太らせやすいから。アメリカでは抗生物質の70%が家畜用に使われていると推定される。
・リポ多糖
肥満患者はリポ多糖が血中に多い。
通常なら新しい脂肪細胞を作り、少量ずつ脂肪を貯蔵するのに、リポ多糖が多いとこれができず、1つの細胞にぎゅうぎゅうに脂肪を蓄え、免疫細胞も集まり、炎症反応のようになっている。
・ゾヌリン
コレラ菌の、腸で爆発的に増えてから下痢を起こさせ、体外に排出されるように仕向ける特徴から、腸壁の細胞結合をゆるめて、血液⇔腸を行ったり来たりできるように開く物質、ゾヌリンが発見された。
肥満患者の血中に多く見られたリポ多糖も、分子が大きいので通常は腸から血液に入り込まない。だが、ゾヌリンがたくさんあると、血液に入るということが考えられる。
・脂肪の取りすぎまたは糖の取りすぎが肥満の原因だという論争があるが、脂肪や糖の摂取量は近年は減ってきている。しかし、肥満率は増えていっている。
食物繊維の摂取量が肥満と関わっている。
食物繊維を分解する細菌が多いと、腸壁の細胞結合がしっかりして、リポ多糖が血中に入りにくくなる。
・肥満型のマウスと痩身型のマウスでは、腸内細菌のバランスが違い、いっしょに生活させると、肥満型は以前より体脂肪を増やさなくなる。
そして、腸内細菌も痩身型のマウスに近づいていく。痩身型のほうは、以前と変わらない腸内環境を保つ。
子供への細菌の継承
・赤ちゃんが生まれてくるときに、お母さんの膣の微生物だけでなく糞便も口に入る。お母さんのおしり側に顔を向けて出てくるので。
そうやって、微生物の受け渡しをしている。他の生物もいろいろな方法で、母から子へ微生物を渡している。
・経膣出産と帝王切開で、子供の病気になりやすさが違う。帝王切開だと膣を通らないので微生物の受け渡しができておらず、病気にかかりやすくなる。
・母乳と粉ミルクでも、やはり粉ミルクのほうが病気になりやすくなる。母乳にも赤ちゃんに必要な微生物が含まれている。
腸内環境の修復
・「自家中毒」や「腸内洗浄」は科学的に根拠が薄い。
・プロバイオティクス
細菌が含まれる食品を摂取することの総称。
多少の効果はあるのでは、という評価。細菌の多様性と数を重視して選ぶのがいいのではないか。
・糞便移植
状態の良い人の腸内細菌をもらう方法。
再発性のクロストリジウム・ディフィシル感染症(下痢で体重がどんどん減ってしまう症状。毎年100万人以上の患者が出て、数万〜数十万人が死亡する)は、抗生物質を投与しても治癒率は30%だが、一度の糞便移植での治癒率はなんと80%。
再発して二度目の移植をすると、治癒率は95%。
・献血のように、健康な人から糞便をもらい、必要な人に提供できるようにする糞便バンクなるものもある。
でも、このドナーになれるほど腸内環境に問題のない人は、50人に1人くらいしかいない。
感想
内容ざっとこんなところですが、おもしろくありません!?
もちろんまだ推測の域を出ない部分もあったり、ちょっと疑義のある話もあったりはするんですが、メインコンセプトや数々のデータ、症例が非常に興味深くて、夢中で読みました。
専門的な話もわりとわかりやすく解説してくれているので、読みにくさは感じませんでした。
特に肥満の話は、気になる人ものすごく多いんじゃないでしょうか。
本書での肥満についての指南は、以下のようにまとめられます。
(食物繊維を分解する細菌が、腸壁を丈夫にして、肥満になるのを防いでくれる)
・痩せてる人といっしょに住むと良い!
(肥満になりやすさは、まわりの人に影響される)
2つめの項目は、特におもしろいですよね。笑
本書の中では、「日本人は海藻を食べているから、それを分解できる細菌を持っている」という話も出てきます。世界から見ると、ユニークなんですね。
その他、以下のような文章も、現状の一般的な日本人にはとても示唆があるのではないでしょうか。
赤ん坊が日々の暮らしで出合う細菌の大半は有害ではない。
というより、赤ん坊の免疫系を教育するのに役立っている。
抗菌剤入りスプレーやティッシュを使うことのほうが、むしろ有害かもしれない。
わたしは元々、今日の世間で行われているアルコール消毒やら何やらに否定的なので、「そりゃそうだよね」と思いながら読みました。
赤ちゃんだけじゃなくて、大人もみんなそうだと思います。
人間も生態系の中で生きているわけですから、当たり前のことに感じるんですけどね。
というわけで、とてもおもしろく、ためになる本でした。
この本の中で疑問に思った部分を、さらに自分で調べて深掘りできるようになりたいなぁ。
以上!