【書評】『イーロン・マスク』ウォルター・アイザックソン:スペースXやテスラは”修羅場”によって成功した

こんにちはー。くまぽろです。

今回は、スペースXやテスラ、ニューラリンクなど名だたる企業を立ち上げ、そしてツイッター(現X)の買収までしてしまったイーロン・マスクの半生が綴られた伝記、『イーロン・マスク』を紹介します!

ぶっ飛んでておもしろいですよ〜笑

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「イーロン・マスク」ウォルター・アイザックソン

イーロン・マスク
著:ウォルター・アイザックソン
翻訳:井口 耕二(いのくち こうじ)

★★★★☆

イーロン・マスクの子供時代から始まり、つい最近の出来事までを丹念に追いかけた伝記本です。

概要

世界的ベストセラー『スティーブ・ジョブズ』伝記作家だからこそ描けた傑作。

いま、世界で一番の注目を集め、議論の的である起業家イーロン・マスクの赤裸々な等身大ストーリー­。
マスクはルールにとらわれないビジョナリーで、電気自動車、宇宙開発、AIの時代へ世界を導いた。そして、先日ツイッターを買収したばかりだ。

イーロン・マスクは、南アフリカにいた子ども時代、よくいじめられていた。
よってたかってコンクリートの階段に押さえつけられ頭を蹴られ、顔が腫れ上がってしまったこともある。このときは1週間も入院した。

だがそれほどの傷も、父エロール・マスクから受けた心の傷に比べればたいしたことはない。
エンジニアの父親は身勝手な空想に溺れる性悪で、まっとうとは言いがたい。
いまなおイーロンにとって頭痛の種だ。
このときも、病院から戻ったイーロンを1時間も立たせ、大ばかだ、ろくでなしだとさんざんどやしつけたという。

この父親の影響から、マスクは逃れられずにいる。
そして、たくましいのに傷つきやすく、子どものような言動をくり返す男に成長し、ふつうでは考えられないほどのリスクを平気で取ったり、波乱を求めてしまったりするようになった。
さらには、地球を救い、宇宙を旅する種に我々人類を進化させようと壮大なミッションまでをも抱き、冷淡だと言われたり、ときには破滅的であったりする常軌を逸した集中力でそのミッションに邁進するようになった。

スペースXが31回もロケットを軌道まで打ち上げ、テスラが100万台も売れ、自身も世界一の金持ちになった年が終わり2022年が始まったとき、マスクは、騒動をつい引き起こしてしまう自身の性格をなんとかしたいと語った。

「危機対応モードをなんとかしないといけません。
14年もずっと危機対応モードですからね。
いや、生まれてこのかたほぼずっとと言ってもいいかもしれません」

これは悩みの吐露であって、新年の誓いではない。
こう言うはしから、世界一の遊び場、ツイッターの株をひそかに買い集めていたのだから。
暗いところに入ると、昔、遊び場でいじめられたことを思いだす――そんなマスクに、遊び場を我が物とするチャンスが巡ってきたわけだ。

2年の長きにわたり、アイザックソンは影のようにマスクと行動を共にした。
打ち合わせに同席し、工場を一緒に歩き回った。
また、彼自身から何時間も話を聞いたし、その家族、友だち、仕事仲間、さらには敵対する人々からもずいぶんと話を聞いた。
そして、驚くような勝利と混乱に満ちた、いままで語られたことのないストーリーを描き出すことに成功した。

本書は、深遠なる疑問に正面から取り組むものだとも言える。
すなわち、マスクと同じように悪魔に突き動かされなければ、イノベーションや進歩を実現することはできないのか、という問いである。

ーーーAmazonより引用

感想

読んだ感想の総括としては、

「すごい大冒険でわくわくする!!
・・・けど、偉業を成すこと=幸せ、とは限らないな」

という感じでした。

本の内容はめちゃくちゃ面白いです。
波乱万丈でもあるし、ものすごい濃密なので、ちょっと同じ1日24時間で生きているとは思えないです。

本の中でも出てきますが、イーロンは強迫性障害のきらいがあります。
ぱっと思った強迫観念に駆られて衝動的な行動を起こす、という話しか出てこない、と言って過言じゃありません。笑
 
 
宇宙にロケットを打ち上げる企業「スペースX」での話を例に上げましょう。

1〜2回目の打ち上げで失敗し、三度目の正直。
これまでの打ち上げでは荷物を積まなかったけれど、今度は空軍やNASAの衛星も荷物に積んで、オールインで成功に賭けた打ち上げです。

しかし、失敗。

全員が絶望に打ちひしがれ、しかも1回目の打ち上げ失敗時には、失敗の原因となったパーツの担当エンジニアのせいだとイーロンがマスコミに発表したことを皆覚えていて、戦々恐々としていました。

イーロン自身もこのとき一度目の離婚直後で精神状態がどん底。
そして、並行して取り組んでいるテスラもキャッシュの流出が続き、火の車の真っ最中

もうどれだけいろいろ重なっているの、というひどすぎる状態です。

だけど、イーロンから出てきた言葉は、
「ロサンゼルスの工場に4台目の部品がある。それを組み立てて、クワジュ(打ち上げ台がある島)に運ぼう」
でした。

いや、それは感動で泣いてまう・・・!(T_T)
(涙腺弱すぎ)

しかしここで感動だけに終わらず、無茶なことを言ってくるのがイーロンです。

1回目が失敗してから2回目を打ち上げるのに12ヶ月、2回目から3回目までには17ヶ月も準備にかかったのに、次の打ち上げの準備は6週間でやれ、と。

「は・・・?何言ってんの??無理だろ・・・」
と全員が思うようなことでも、イーロンは「基本設計は変えずに3回目の失敗を修正できるから6週間だ」と発破をかけ、現実を歪曲して「できる」と言い、「シュラバ」を宣言
もうこうなったら何が何でもやるしかないという状態に皆を持って行きます。

この4回目の準備でも、飛行機でのクワジュへの運搬中にロケットのタンクが気圧で破損するトラブルが起きましたが、現地でどうにかこうにか直しました。
リスクをとってチャレンジした成果が実り、遂に遂に、打ち上げに成功しました。

いや〜よかったよかったと思った、そこのあなた。
この一回だけじゃないんです。

イーロン・マスクはこんな感じのドタバタ劇を、この一回だけでなく一生やっている感じです。ほんとに。
 
 
ものすごい推進力ではあるけれど、一度は頑張れてもそんなにずっと全てを賭けた働き方はできない、という人も多いですよね。
イーロン自身の気持ちの浮き沈みもものすごく激しいようで・・・。

大半の人は同じことをしたいかと聞かれたら、したくないと答えるんじゃないでしょうか。

もちろん、幸せはその人自身が決めるもので、彼は彼が望んだ人生を生きていると思うし、そういう意味では幸せなのかな・・・?
難しいですね。
 
 

(引用元:テスラが米フリーモント工場でギガプレスを使った単一鋳造部品の大量生産を開始 – EVsmartブログ

私としては一番の学びは、常識を疑って失敗を恐れずに試すこと、リスクをとってやってみること、ですね。

テスラの電気自動車でも、スペースXのロケットでも、とにかく削れるものを削って奇跡的なコストダウンをしていくわけですが、その中には削ったけれどやっぱり必要で、削ったせいで失敗して元に戻すことになるものがありますよね。

それを「削ったもののうち10%以上元に戻すことにならないなら、削り足りない」と言うんです。

いや、まぁ、たしかにね・・・!?

「やってみなきゃわからない」
を現場の工場で突き詰めた発想ですよね。

ちょっとネジが飛んでないとなかなかそんな発想にはなれないけれど、たしかにその通りだなと思いました。
 
 
それから最後に。
この著者のウォルター・アイザックソンさんは、スティーブ・ジョブズの伝記も書いている有名な人なんですが、たまにこの人の思考の偏りがかなり色濃く出る部分がありました。

イーロンは「コロナは大したことない。ワクチンは危ない。アンソニー・ファウチ(米国立アレルギー・感染症研究所の元所長)のやっていることはおかしい」と思っている派だと思われますが、著者は大手メディアを信じているようで、そういった内容を「陰謀論だ」と思っているような記載が何箇所かにありました。

同じようにワクチンの危険を訴え、アンソニー・ファウチを追及している、米大統領選候補のロバート・ケネディ・ジュニアのツイートを、イーロンが賛同しながらリツイートしたことなどなども、「陰謀論に流れがちで危うい」というように評していました。

これだけの丹念な取材活動をして、こんなに面白い本を書いているのに、その点を調べたりしていないのかな。どうなんでしょう?
 
 
と、長くなりましたがこんな感じで、上下巻で大ボリュームでしたが、読み応えのある一冊でした。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
以上!