【書評】「ミラノ 霧の風景」須賀敦子:戦後にイタリアで暮らした女性翻訳家のエッセイ

こんにちはー。くまぽろです。

最近、母と初めて読書会をしました。
その題材として、母に選んでもらったのが「ミラノ 霧の風景」です。

自分で読むことはなかっただろう本で、新鮮でした!

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ミラノ 霧の風景

ミラノ霧の風景―須賀敦子コレクション (白水Uブックス―エッセイの小径)

著:須賀 敦子(すが あつこ)

★★★★☆

須賀敦子さんは、1950年代にフランスとイタリアに留学し、その後イタリアに13年間住んだ女性の翻訳家、随筆家、イタリア文学者です。

ちょうどわたし(30代)のおばあちゃんくらいの年代の方ですね。
その頃の外国留学は、相当めずらしかっただろうと思います。

日本に帰国後、50代後半になってから、イタリアでの暮らしについてのエッセイを書き始められたようです。

概要

記憶の中のミラノには、いまもあの霧が静かに流れているーーー。

ミラノをはじめ、各地で出会った多くの人々を通して、イタリアで暮した遠い日々を追想し、人、町、文学とのふれあいと、言葉にならぬため息をつづる追憶のエッセイ。
時の流れが記憶の中で凝縮され、静かにゆっくりと熟成する。
やがてそれらの記憶は、霧の日に作ったポレンタの匂いやペルージャの町の菩提樹の花の薫りとなって蘇る。

講談社エッセイ賞、女流文学賞受賞。

–本の背表紙より引用

感想

正直、自分ではまったくチョイスすることのなかった本だったので、読む前は、おもしろいのかなぁと不安もありました。
でも結果的に、すごく良かったです。

文章の表現がすてき。

けっこう出来事をサバサバ語っているような気もするのに、空気のような、雰囲気のような描写が独特で、読んでいて想像する景色の中に登場人物の気持ちも見えるような、そういう印象を受けました。

また、戦後の時代に一人でイタリアに住んで、人間関係を少しずつ作り上げていく、ふわふわ浮いているような感じが、不安もあるけど刺激も多くて楽しそうだなと思いました。

短編集の形式になっているのですが、以下が特に好きでした。

  • 「ナポリを見て死ね」
  • きらめく海のトリエステ
  • 鉄道員の家
  • 舞台のうえのヴェネツィア

「ナポリを見て死ね」のような、細かいことには全くこだわらない大らかな人々がおもしろかったりする一方で、多くの話では、人との別れが語られます。
特に「きらめく海のトリエステ」と「鉄道員の家」は、若くして亡くなった旦那さんの思い出に通じる部分が多く、印象に残りました。

「舞台のうえのヴェネツィア」は、ヴェネツィアに一度も行ったことのないわたしにも、その町の顔を想像させてくれて、いっしょに体験しているような楽しさと不思議さが味わえました。
 
 
ちなみに、母との読書会(ZOOMで二人でやってる)では、この「ミラノ 霧の風景」を段落などで分けて、交互に音読する、という初めての経験をしています。笑
わたしには新しい。おもしろい。
週1回の定期開催になりつつあります。

自分では出会わなかったであろう本に出会えて、新しい風が吹きました。
よきよき。

以上!