【書評】「悪の教典」貴志祐介:原作小説レビュー(後半ネタバレあり)

こんにちはー。くまぽろです。

今回はまったく読んだことのない作者さんの小説に手を出してみました。
映画にもなった貴志祐介さんの『悪の教典』、サイコ・ホラー小説です。

スポンサードリンク

「悪の教典」貴志祐介

悪の教典
著:貴志 祐介(きし ゆうすけ)

★★★☆☆

映画にも漫画にもなったサイコパス・ホラー小説です。

表の顔は、生徒から大人気で、同僚からも慕われる英語教師。
しかし、裏の顔は、非常に計算高い大量殺人鬼
学校で起こるいくつかの出来事が、最終的にとんでもない事態につながっていきます。
 
 
わたしはこれまで全くノータッチでしたが、貴志祐介さん有名ですよね〜。

Twitterで「#読了」タグで、読書好きな人々がどんな本を読んでるのか、たまに眺めるの好きなんですが、そのときにちょくちょく見かけるので、「人気なんだな〜、そのうち読んでみよう」と思っていた作家さんでした。

読ませる力がすごい!と定評のある作家さんです。

あらすじ

知能が非常に高いが、人への共感力が欠如した、主人公の高校教師・蓮見聖司。

多くの生徒から親しみをこめて「ハスミン」と呼ばれ人気があり、同僚の先生からの人望も厚い。
しかしそれは、どうすれば相手の気持ちを掴めるかよく知っているから。

彼は人を殺めることに対して、心理的ハードルをほぼ感じていない。
面倒で鬱陶しい相手だと思ったら、すぐに殺してしまう。もちろん自分の犯行だとはバレないように。

表の爽やかなイメージとは裏腹に、金銭欲や性欲が向くままに行動し、その裏の行いがバレそうになると、口封じでまたあっさりと殺してしまう。

普段からの信頼が厚いために、周りは誰も疑っていない。
しかし、勘の鋭い一部の生徒は、小さな違和感から不審に思い始めるーーー。

感想

率直に感想を言うと、ここまで主人公が頭おかしいサイコサスペンス読んだの初めてで、もうおなかいっぱいになりました。笑

小説としては、続きが気になってぐいぐい読めます!
上下巻にわかれているんですが、後半の方はもう怖すぎて眠れないのでかなり一気に読みました。
あと、伏線の貼り方がとても良くできていて、きれいだなと思いました。

でも、登場人物の内面に踏み込んだ感想としては…

「本当に頭がよかったらこんなことしなくないかしら」
と思ってしまいました。
 
 
この先は、一部ネタバレを含んだ感想となります。

最終的なストーリーの結末については触れませんが、物語の後半で語られる部分を含みますので、それでもいいよという方だけスクロールしてください〜。

いや、だってね、こんなに身の回りで人が死んでる人なんていないですよ?笑

普通もっと疑われますよ。
親も恩師も死んでて、学生時代の友達も何人も死んでて、アメリカでの前職の同僚も死んでて、前任校での生徒も死んでるなんて。
こんなに周りに不審死が多いなんて、ヒラリー・クリントンみたいですね、とか思っちゃいました。
 
 
そんなわけで話は戻りますが、本当に頭が良ければ、人殺しなんてリスクを自分で犯すのは、最後の最後の最後の手段では

物語では、何かの犯行のせいで、また次の犯行を犯さなくてはというドミノになってしまっていて、正直言って全然リスク回避になっていないんですよ。
そんなこと言ったら、こういう小説がそもそも書けないって話になっちゃうかな…?笑

それに本当に頭が良ければ、他の人が感じているだろう感情が自分の中に湧かないことについて、もっと深く考える気がするんですよ。
感情がないくせに欲が強いことについても、もっと考える気がする。
それが「考える力」「頭の良さ」というものじゃないかと。
 
 
ちょっと話がそれますが、金銭欲って以下の3パターンか、その複合だと思うんですよ。

・本能的欲求を満たすための手段か(高級な食事、良い家、お金で釣れる女性)
・自己承認欲求を満たすためか(俺はこんだけすごいぞ)
・手段ではなく目的になっているか(もはやただ単にお金を貯めることが快感)

生徒や同僚の先生の気持ちを操ることに快感を覚えているふしがあるから、やはり自己承認欲求みたいなものなんでしょうか。支配欲?

普通の幸せ感覚がある人なら、上記のような欲に動かされている自分に気づいたときに、恥ずかしいという気持ちが湧くし、ほんとにそれって幸せなのかなって疑問を持つと思います。
好きな人(家族、恋人、友達など)といっしょにごはん食べて楽しいとか、そういった純粋な幸せとかけ離れていることに気づきますよね。

そういう感覚を持っていないとしたら、自己承認欲求や支配欲でしか幸せを感じられないとしたら………うーん、かわいそうとしか思えない。

でもやっぱり現実にもそういう人っているんでしょうね。
この主人公の蓮見は極端な例ですけど、現実に存在するそういう人は、やっぱり上記のような欲求に向かって突き進むことしかできないんでしょうか。
わたしから見れば、空虚なものに見えてしまうけれど。
 
 
小説の中の救いとしては、特定の人を殺害するときだけ、蓮見が「自分でもよくわからない抵抗感」を感じていることでした。

その人を手にかけようとするときだけ、ふと手が止まってしまい、殺すのに手間取ってしまう。
そのために、別の人物にバレてしまい、余計な犯行を重ねる事になり、最終的な非常事態を招いてしまいます。

物語全体は絶望に突き進む話なんですが、小さな小さな希望が砂粒1つほどだけでもあって、それは良かったです。
 
 
うん、なんだかびっくりするほど話がまとまりませんが、感想はこんなところです!笑

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
以上!