【書評】「名前探しの放課後」辻村深月:SF×青春!!(後半ネタバレあり

こんにちはー。くまぽろです。

辻村深月すごろくを邁進中。
今回は、『名前探しの放課後』です!

スポンサードリンク

「名前探しの放課後」辻村深月

名前探しの放課後
著:辻村 深月(つじむら みづき)

★★★★☆

「俺、もしかして過去に戻ってる…?」
と気づくところから始まる、SFのようなミステリーのようなお話です。

あらすじ

依田いつかが最初に感じた違和感は撤去されたはずの看板だった。

「俺、もしかして過去に戻された?」

動揺する中で浮かぶ一つの記憶。
いつかは高校のクラスメートの坂崎あすなに相談を持ちかける。

「今から俺たちの同級生が自殺する。でもそれが誰なのか思い出せないんだ」
二人はその「誰か」を探し始める。

–本書の裏表紙より引用

感想

1つ1つの出来事が青春で、登場人物たちの心の成長があって、物語としてすごくおもしろいです!

キャラが立っているし、気持ちの揺れ動きも共感できて、一緒に泣いたり笑ったりできる感じ。

ミステリ的な部分で言えば、うすうす感じることと、最後の「そうだったのか!!」と二段構えで、辻村ワールドのおもしろさも健在です。
 
 
さて、ここからはネタバレありで書きますので、未読の方はブラウザバックしてくださいね〜。
 
 

「これ、あすなが本当のターゲットじゃない?」
ということは、気づくように書かれていたと思います。

そう思わせるところがいくつもありますよね。

・最初にあすなにタイムスリップの話をしてから、他の人に話す間に、考えの変化が描かれないことに多少疑問を思ったり。

・1月まで記憶があったのに自殺が起きたのは12/24で間が空いていて、かつ、1月にあった何かをいつかが隠していること。

・体育館に閉じ込められた事件の帰り道で、天木が「脈があるか」と言う聞き方をしたこと。
河野のことをそういうふうに聞くかな普通、と疑問に思いました。
(ちなみに、中に入って、つっかえ棒はずして出られるなら、河野自身が普通に外出られるじゃん?どゆこと?と思ってしまいました。痛めつけられて、気を失ってた設定なのかなとか)

・初めてみんなでグリル・さか咲でごはんを食べていた時に、天木の服装の話から、先週も彼らは会っていて、しかもそれをあすなには知られたくないようであること。

・いつかが河野に水泳を教えはじめたのを見て、あすなもやりたいと言い出したときに、いつかがものすごく嬉しそうだったこと。

語りがあすな目線であることも増えて、たぶんここらへんで「これ、あすなが主役だよね?」とほぼほぼ思ってました。
ただ、河野と友晴の関係が全部演技の可能性も考えはしたけれど、それすごい演技派だよねぇと思って、確信まではいけませんでした。

・河野が実は泳げる、というのも、あすな水泳復帰時にあからさまにわかって、確信がいよいよ高まる。

・椿とピアノ連弾することになったのも、あぁやっぱり、あすなとのイベントだよねと思った。
 
 
でもでも!!
まさかまさか…!!

秀人が『ぼくのメジャースプーン』の「ぼく」だったとは!
椿って名前じゃないんか!ふみちゃんか!

まさかまさかそういう話だったとは、それはまったく想像してませんでしたよ。

てかこれ、メジャースプーン読んでないと、最後のオチよくわからなくないですか??笑
そこは「??」と思いつつ終わって、あとからメジャースプーン読んだときにつながればいいか、って書き方なのかな。

でも、能力の効き方もちょっとこれまでとは違いますよね〜。
言われたことを脳内で想像して、それがあたかも体験してきたかのように感じちゃって、結果的に促されたことを実行する、っていうパターンか。人によっては、そういう効き方をするってことなんでしょうかね。

あと、あれだ!
もう全然覚えてないから、『凍りのくじら』読み返そうと思いました。笑
松永くん!そして明らかに、写真家になったあの女の子!
いろいろつながってきておもしろいですね〜。
 
 
今作は、あすなとおじいちゃんの関係がほんと良かったです。
それぞれに良い人だけど、同時に、頑ななとこがあったり、言えない気持ちがあったり。

そしてそのあすなに対して、いつかみたいな男の子が気持ちを抱くっていうのも良かったし、それが最後までなかなかはっきりとは見えない書き方もまた良かったなと。

謎解き要素がありながらも、そもそも青春劇としてすごく良いんですよ。

学校からおじいちゃんとこまで送り届けるときも、先生とかほっぽって
「ついて来て!絶対に送り届けるから!」
ってかっさらって、全力で走っていく映像が見えるようでした。

あぁ、全部この日のためだったんだな、って胸がぎゅっとなりました。

最初の1週間、あすなから見て動きがなかったのは、椿に「借りた本をちゃんと読まないのはだめだよ」って言われてがんばって読んでたんだと思ってたんですよね。
それは、ほんとのターゲットに向けた作戦会議をしてた時間でもあるけど、好きだから、あんな眠くなっちゃう本でもちゃんと読んで返したんだなとか。

友晴はこの日のために制服で校門からダッシュ練してたんだなとか。

あぁ、消防車に乗れるかってこの話だったのかとか。

「スーバーあずみ」、ここで登場かぁ!!とか。笑

たくさん散らばってた伏線が全部走馬灯のように駆け抜けていきましたよ。
良かったわぁ。かなり好き。ほんと良かったです。

あと、どう考えても、河野と友晴が最優秀男優賞だと思います。本当におつかれさまです!笑
 
 
というわけで、一旦このあと辻村すごろくは原点回帰して『凍りのくじら』を読み返してきます。
ではでは。以上!