【書評】「世界再建と国防国家」鈴木庫三:戦前の陸軍少佐が語る国防とは

こんにちはー。くまぽろです。

今回は、戦前の本の復刻版です。とても考えさせられました。

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「世界再建と国防国家」鈴木庫三

世界再建と国防国家
監修:陸軍省情報部 陸軍少佐 鈴木 庫三(すずき くらぞう)

↑こちらは元の本。↓が復刻版を販売しているサイトです。

世界再建と国防国家

★★★★☆

陸軍省情報部の陸軍少佐であった鈴木庫三が昭和15年(1940年)に監修して書かれた本。

国家とは何か、国防とは何かから始まり、各国が当時どのような体制になっていたのかを述べた上で、日本はどうするべきなのか考察している。

ヨーロッパではすでに第二次世界大戦がはじまっていて、日本においては支那事変(=日中戦争のこと)がすでに起こり、大東亜戦争(=太平洋戦争のこと)はまだ起きていない時期に書かれ、非常に的確に分析されていておもしろい。

概要

国家とはいかにあるべきか。
大東亜戦争を目前にして、日本はどのように国を作って、それを守っていくべきか。

ドイツ、イタリア、ソ連、フランス、イギリス、アメリカ、各主要国の国防体制や経済政策を分析。
その中で日本はアジアの盟主として、いかに東亜地区の共栄とその独立を守っていかなければならないのか。

独自の慧眼で国家とその防衛を語った稀にみる良書の復刻版!

–本書の帯より引用

感想

めちゃくちゃ良い本なので、平和ボケした日本人(わたしを含む)みんなに読んでほしい。
復刻本だが、特に言葉的に読みにくいということはない。

最初のほうで「文化至上主義」という欧米が進めている観念の話が出てくる。
これは自由尊重、個人主義、協調主義、平和主義ともいうような、「文化を最高のものとし、国家を第二義的なものとし、世界平和の上に各人の個性を惜しみなく発揚する」というような美辞麗句を並べた欧米思想なのだけれど、その実質は「血みどろな平和」であり、「我々アジア人の血をも犠牲にして咲いた花」であり、「その自由主義はアジアを、アフリカを自由に侵略しようとする主義」だと喝破している。

本当にその通り。
中世のころはスペインとポルトガルが世界をどんどん植民地化し、現地の人たちを残虐に殺して奴隷化し富を搾取していた。
そしてヨーロッパでの力関係に変化が訪れ、今度はイギリス、フランス、オランダなどが支配するように変わったが、残虐非道さは変わらず。
イギリス人がオーストラリアを植民地にしていたとき、レクリエーションとしてアボリジニ狩りをやっていた等、そういう相手を人とも思っていない非道な行いを、ヨーロッパ人はアジアでもアフリカでもアメリカ大陸でも世界中でやってきた。
本当にどの口が平和主義とか言ってるんですか、って感じ。

つまり、そういう欧米が広めている一見キレイな主張は、相手にそう信じ込ませて自分たちが支配するための周到な宣伝文句なわけだ。
これは現代の世の中でもなんら変わってない。

こういった思想が入ってくることなどからも、国防は軍事的な側面のみでは用をなしていないことがわかる。
政治、経済、外交、思想等、すべてが国を守ることに絡んでいる。全方面における国力の培養そのものが国防だと本書は主張しているのである。
 
 
また本書では、大東亜戦争の意義も語られる。
この「大東亜戦争」という言葉は戦後封印されてしまって、今日では太平洋戦争や第二次世界大戦という言葉しか使われないが、これも一種のプロパガンダのために言葉がすり替えられている。

大東亜とは東アジア(日本、朝鮮半島、中国をはじめ、東南アジアまでを含む)のことを指しており、ここにも例外なく欧米列強の手は伸びていて、ほとんどが植民地化されていた。
当時の東南アジアはタイ以外全部植民地(タイは当時どのような状況だったのか気になる)、中国も形としては植民地とまでなっていないが、イギリスとの戦争に負け、言いなりになっている状態。
日本はこの欧米勢力を追い払い、搾取するのではなく、ちゃんと現地の住民が現地で生産する富を享受できるような大東亜共栄圏を作ろう、という意志で立ち上がった戦争だった。

その意図を隠すために、この大東亜戦争という言葉は封じられてしまったわけで、たしかに学校教育でそんなことを習った記憶がないよね。
 
 
ただ本書は、独裁体制を良しとする主張で、ここが本当に難しいところだなと思う。

「独裁=悪」と誰もが考えがちで、わたしもずっとその刷り込みがあったし、実際上に立つ人に悪意があった場合には大変な結果になりうる。
でも上に立つ人間がとても真っ当で頭もよく仁義のある人であれば、非常に良い政治が行えると思う。
合議制は時間がかかるので、どうしても即応力が劣る。劣るどころかずるずる何も決まらない可能性もある。施策に一貫性が保てるかも怪しい。

現代の中国のような国は、良い意味でも悪い意味でも決断や行動が早く、多少無理矢理でも施策を国民に半ば強制できる。
本当に国のためになることで、国民もそれを了解して1つの方向に向かっているなら最善のことができるわけだけど、不当な権力の行使になるときももちろんあるわけで。本当に良し悪しが激しいね。。
 
 
最近歴史を学びはじめて、やっと意味や文脈がつながる歴史がわかってきた。

学校教育では、押し付けられた自虐史観や欧米の汚点を隠す教育が行われてきてたので、出来事の背景が見えないし、出来事単品を覚えるだけって感じで意味がわからなかったものが、どんどんつながってくる感じで非常におもしろい。

引き続き、学んでいきます。
以上!