【書評】「真夏の方程式」東野圭吾:ガリレオシリーズ映画化原作(後半ネタバレあり

こんにちはー。くまぽろです。

今回はひさしぶりの東野圭吾作品。
ガリレオシリーズ、『真夏の方程式』です。

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「真夏の方程式」東野圭吾

真夏の方程式
著:東野 圭吾(ひがしの けいご)

★★★☆☆

「太陽が真上近くに昇ると、海の底が照らされて、まるで色のついた水晶がいくつも沈んでいるみたいに見えるんだって。だから玻璃、玻璃ヶ浦ってわけ」

きれいな海のある田舎町・玻璃ヶ浦はりがうらで見つかった、男の死体。
これは事故か、殺人か。

映画化もされた、福山雅治主演のガリレオシリーズの原作本です。

あらすじ

夏休みを玻璃ヶ浦にある伯母一家経営の旅館で過ごすことになった少年・恭平
一方、仕事で訪れた湯川も、その宿に宿泊することになった。

翌朝、もう一人の宿泊客が死体で見つかった。
その客は元刑事で、かつて玻璃ヶ浦に縁のある男を逮捕したことがあったという。

これは事故か、殺人か。
湯川が気づいてしまった真相とはーーー。

–本書の裏表紙より引用

感想

このお話の映画自体は見たことがないのですが、ガリレオシリーズのドラマは見ていたので、主人公というか探偵役の湯川教授はもう福山雅治でしか想像できないですね。笑

環境保護と人間の活動のバランスや、科学の魅力を小学生に伝えることなど、おもしろいテーマは作中に出てきて、そのあたりはすごく好きです。

もちろん推理も楽しめます。
ただ正直、読後感はあまり良くないかもです。

ネタバレしない範囲で言うと、誰も幸せにならない話というか。
スッキリした解決を見たい人にはあんまりおすすめしないですね。
 
 
以下はネタバレありで書きますので、未読の方はブラウザバックしてください〜。
 
 

正直、遠因となった昔の事件(娘の成実が犯した殺人)の動機に納得がいきませんでした

今まで普通の家庭で育った女子高生が、親や自分の出生のことで脅してくる不快な人に会ったとしても、さすがに殺意は抱かないんじゃないかなっていう。
それまでさんざん苦労してきて、ある日その原因が目の前に現れたりした場合だったら、まだ高校生の女の子が突然殺意を抱くのも納得いくけれど、そういうわけでもないので、衝動に乏しいと思いました。

そして、親だったら子供のことを思って自首させるんじゃないのかとも思いましたね。
少年院に入って前科がつくことも大変なことだけれど、ずっと犯した罪を隠して生きていくことのほうが本人にとって重いんじゃないかなぁ。
まぁここについては、その親次第かとは思いますが。
 
 
もう一点気になったのは、殺された元刑事の塚原さんが不注意すぎること

昔の事件を掘り起こすつもりじゃないんなら、そもそも軽々しく会いに行って昔の事件のことを口に出すべきじゃないですよね。そんなこと冤罪を負った仙波さんも望んでいないのに。

様子を見てきて、娘さんの写真を何か口実をつけて撮らせてもらって、それを仙波さんに渡すくらいでいいじゃないですか。
不用意に掘り起こして、無駄に火種を作った感がしてしまって、「これが有能で情に厚い刑事のやることか?」と思ってしまいました。

主にこの2点で、う〜ん…となってしまったのが星3つにした理由です。
 
 
でも科学に対する湯川教授の姿勢が見える部分は、すごく好きです。
一番は、湯川と恭平がペットボトルロケットで海底の美しい色を見ようと実験しているシーン

すごく夢のある楽しい実験で素敵です。わたしもその場にいっしょにいたい気持ちになりました。
具体的な課題を科学でどうクリアするかの試行錯誤とか、これができたらすごいぞ〜というわくわく感とか、たまりません。

また、あのひねた感じの子が、だんだん夢中になっていくのも良いんですよね。
こういう科学の楽しさを表現してくれるのは、ガリレオシリーズの良いところだし、それは今作でも健在でした。

儲かるか儲からないかだけで、科学者は自分の立場を変えたりしない。

科学者がまず一番最初に考えるべきなのは、どの道が人類にとってより有益かということだ。
有益だと判明すれば、たとえ自分には利益がなくても、その道を選ばなくてはならない。
無論、有益であり尚かつ自分も儲かるというのが理想ではあるが」

この言葉もすごく良い。
現実には、こういう信念をもった科学者ばかりじゃないんですけどね。
やっぱりどんな職業でも結局、志が大事。
 
 
東野圭吾作品はまあまあ読んでるんですが、今回はだいぶ久しぶりでした!
以上!