【書評】「ザ ・ゴール〜企業の究極の目的とは何か」

『ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か』
著 : エリヤフ・ゴールドラット
訳 : 三本木 亮

ザ・ゴール

堅そうな本だと思っていたけど、小説形式で意外に読みやすかった。

常に納期に遅れまくっていて赤字の工場の所長さんが主人公。
上司から、「このまま赤字じゃ工場は閉鎖するしかないから、3ヶ月でどうにかしろ!」と言われて、そんなの無理だと最初は途方にくれるけど、偶然再会した学生時代の物理の先生(ジョナ)にアドバイスをもらい、工場を改革していく話。

いろいろな製品が各工程を通って出荷に至るまでの流れをどう管理するか、を考えていく。

最初の状態では、工場の作業にロボットが取り入れられ、そのロボットをなるべくずっと動かすことこそが「効率的」だから、その数字を重視しろ!と本社から言われている、みたいな状態。
ロボットをとにかく動かすこと中心になっていて、各工程・各作業所がバラバラに動いている感じ。それぞれのロボットが最大限動いていれば、めっちゃ作ってるから効率的だろ!っていう状態になってしまっている。

でも、その状態は実際には効率的ではない。なぜなら全体の流れを見て、出荷する製品をいかにスムーズに作るかという視点になっていないから。
部分最適のやり方では、無駄な在庫がどんどん積み上がっていくのに、最終的な出荷、そして売上に全然つながっていない。
これを全体最適の形に変えていくのが、改革の主旨。

一番の肝は、「制約条件を見つける」ということ。
制約条件ていうのは、工程の中で一番スペックが低いところのこと。ボトルネックになっているところ。
制約条件を元に考えていくやり方をTOC(Theory of Constraints)と言うのだね。

このボトルネックを見つける前に出てきた、統計的ばらつきと依存関係の話、そしてそれを具体的に数値で表したサイコロのゲームはとてもおもしろい。
ざっくり言うと、各工程での処理能力には、ある程度のバラつきがあって、完全に一定ではない。そして、後の工程は前の工程すべてのバラつきのしわ寄せが来るよ、という話。

ボトルネックを見つけたら、そこが最大限動くようにする方法を考える。そして他の工程はそのボトルネックに合わせて稼働していく形を目指す。
こうすることで、きちんと製品出荷までの各工程でのスケジュールが管理できるし、無駄な在庫を減らせる。すべてが、製品を出荷して売上を上げることにつながっていく。

工場の改革と同時進行で、奥さんと離婚の危機になっているところが、めっちゃ現実っぽい。笑
でも、家で仕事の話をするのって、けっこう良いことなんじゃないかなと思った。建設的によく話すことで、パートナーとの理解が深まるし、何か問題があったときにも話し合って解決していく環境が作れると思う。

工場が劇的に改善した後の話は、改訂版で後から付け足されたのだろうか。なんか話がもやもやしていて、それまでとはちょっと読み応えが違った。最終的には、工場での改善を普遍的な方法へと昇華させることで決着したが、なんだか何を目的に話をしているのかわからなくなる感じが、途中で度々した。

小説の中では、かなりくうまくいっているのだけれど、実際には改革を浸透させていくのもとても大変だろうなと思った。
新しいやり方を導入していくのに、最初はとても抵抗があるだろうから、工場のメンバーのチームワークや信頼感がなければできないと思う。

ジョナが主人公に対してやっている「答えを教えるのでなく、ヒントを出して自分で考えさせる手法」はとても良い。けれど、これもやり方次第では反感を買ってしまいそうで難しそう。チームを率い、慣習を変えていくやり方を、これから学ぶ必要があるなぁ。