【書評】「日米開戦 陸軍の勝算」林千勝:一次史料で読み解く戦争の真実

こんにちはー。くまぽろです。

太平洋戦争(本来の名称は大東亜戦争)あたりの日本の近現代史は、学ばねばならないことが多くありそうだなと以前から感じていて手に取った一冊、『日米開戦 陸軍の勝算』を紹介します。

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「日米開戦 陸軍の勝算ーー「秋丸機関」の最終報告書」林千勝

日米開戦 陸軍の勝算ーー「秋丸機関」の最終報告書
著:林 千勝(はやし ちかつ)

★★★★☆

これまで小学校〜高校での教育やテレビ番組なんかを通して、
「日本は勝ち目がないのに、ムードが高揚して戦争に突入し、そして敗戦した」
と聞かされてきませんでしたか?

私はそうでした。
でもこの本を読むことで、それは勝者のアメリカが語る歴史であり、ひどくねじ曲げられたものであることがわかります。

陸軍は非常に論理的・合理的に戦略を立てていたということを、発見された当時の資料をひもといて解説してくれる本です。

概要

■負けはしない戦争だった!

七十年前のあの戦争は、本当に無計画で非合理なものだったのか。
開戦を決意した陸軍は無謀にも、勝算のない戦いに、やみくもに突入したのか。

そんなはずはない。
近代史を研究する著者は「陸軍戦争経済研究班」の報告書を詳細に調査し、少なくとも陸軍は、科学性と合理性に基づいて開戦に踏み切ったことを知る。

秋丸機関と呼ばれた研究班は、第一級の英才を動員し、英米の経済力を徹底研究。
報告書に基づいて策定された戦争戦略は、大本営政府連絡会議に上げられたのだった。

報告書の真相は戦後、意図的に歪曲化(わいきょくか)され、闇に葬られた。
そこには何が書かれていたのか。
報告書の真の意図を探り、戦後の常識に一石を投じる驚愕(きょうがく)の研究書!

Amazonより引用

感想

簡単に内容を説明すると、以下のような感じです。

・日本軍(陸軍)が無謀な戦争へと向かって暴走した、と一般的に言われているのは、アメリカのプロパガンダ。占領政策として企図した結果。
ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム戦争についての罪悪感を日本人の心に植えつけるための宣伝計画

・開戦したのは、アメリカが主導して対日全面禁輸措置をとり、石油などが完全に入ってこなくなって追い込まれた上での自衛のための決断。

・陸軍の秋丸機関は非常に緻密な調査をし、日米英の経済力を把握・比較していた。
経済規模としては不利なのを承知した上で、どうすればその条件の中で勝つことができるのかを論理的にまとめ、報告書をあげていた。
(当時のこの報告書が実際に残っている)

・戦略としては、南進してインド洋においてイギリスの海上輸送路を断つこと。アメリカに対してはこちらからは仕掛けない。

・上記報告書のとおりに戦争を進めれば勝つ見込みがあったのに、海軍を率いる山本五十六らがその計画を妨害した結果、真珠湾攻撃が行われてしまった。アメリカと正面から戦わなければいけなくなってしまった。
 
 
さて、これを聞いてどう思いますか?
初めてこの話を知る方は、「ほんとに??」ってなると思います。

でも、これらは当時の報告書や内部文書、要人の日記なんかにちゃんと書いてあるわけですよ。
実際、当時のイギリス首相チャーチルが「戦略通りにやれば日本が勝っていた」と発言したという記録もあるようです。

そしてなんと、上記の報告書(英米合作経済抗戦力調査)は、ネットでデジタルアーカイブが見られます。

東京大学経済学図書館のデジタルアーカイブ
https://ut-elib.sakura.ne.jp/digitalarchive_02/rare/5512339978.pdf
 
 
戦争が始まってから当初の作戦に海軍が意地のように反対して真珠湾攻撃などをゴリ押ししたことで、どんどん悪い方向に進んでいくことも語られます。
読んでいて胸が痛くなりましたし、戦争に勝った世界線があり得たのかと思うと、なんだかすごく気持ちが遠くなりました。

生まれてからずっと日本は敗戦したということを聞かされて育ちましたからね。
そうじゃない社会になった可能性があるわけで。
もしそうだったら、わたしが知ってる日本とだいぶ違うんだろうなって、ぼんやり思いました。

いやぁ、これはもう少し深掘って勉強したいです。

ちなみに林千勝さんの本は、以前に『ザ・ロスチャイルド』も紹介しているので、よかったらそっちも見てみてください。
違うテーマですが、気になったらぜひ実際本を読んでいただけたら、話が根底でつながっているのがわかってすごくおもしろいと思います。

以上!