【書評】「100の思考実験〜あなたはどこまで考えられるか」ジュリアン・バジーニ

『100の思考実験: あなたはどこまで考えられるか』
著:ジュリアン・バジーニ
イラスト:河井美咲
翻訳:向井 和美

思考実験

思考実験というのは、現実にはなかなか起こりえないような条件を仮定して、その条件の元でどういう決断をするかを考える、というものです。

一番有名なのは、「トロッコ問題」と呼ばれているものですね。
初めて聞く人のために、例としてトロッコ問題がどんなものか見てみましょー。

ーーーーー以下、Wikipediaから抜粋ーーーーー

まず前提として、以下のようなトラブル (a) が発生したものとする。

(a) 線路を走っていたトロッコの制御が不能になった。このままでは前方で作業中だった5人が猛スピードのトロッコに避ける間もなく轢き殺されてしまう。

そしてA氏が以下の状況に置かれているものとする。

(1) この時たまたまA氏は線路の分岐器のすぐ側にいた。A氏がトロッコの進路を切り替えれば5人は確実に助かる。しかしその別路線でもB氏が1人で作業しており、5人の代わりにB氏がトロッコに轢かれて確実に死ぬ。A氏はトロッコを別路線に引き込むべきか?

なお、A氏は上述の手段以外では助けることができないものとする。また法的な責任は問われず、道徳的な見解だけが問題にされている。あなたは道徳的に見て「許される」か、「許されない」かで答えるものとする。

つまり単純に「5人を助ける為に他の1人を殺してもよいか」という問題である。功利主義に基づくなら一人を犠牲にして五人を助けるべきである。しかし義務論に従えば、誰かを他の目的のために利用すべきではなく、何もするべきではない。

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どうでしょうか!?明らかに悩ましいですね・・・。
特に、自分がトロッコの切り替えレバーを引く場面を想像すると、本当に怖くて決断できない気がしますね。
これと同じような思考実験もこの本に収録されています。

本では、思考実験の内容とそれについての著者の見解がセットで載っています。
自分で考えてみて、こうするかな?と結論づけたものの、著者の見解を読んでまた悩んでしまったり(笑)
答えの出ない問題を考えることを楽しむ本ですね。

他にも、、、

・殺すことと死なせることは違う?
・バレなければ浮気していい?
・身内1人と見ず知らずの大人数、どっちを助ける?
・結果として大きな正義を成せるなら、そのプロセスで賄賂を渡すような正しくないことをしてもいいのか
・目的が善なら、道徳を曲げるようなことをしてもいいのか
・信仰は神を信じることか(神が命じたなら道徳を曲げるのか)
・人格の同一性は何をもって決まるのか

などなど、考えさせられる内容が盛りだくさんです。

その中でも特に興味深かったのが、
【内的経験は言葉によってしか表せない。同じ言葉を使っているけれど、本当に他人も同じ内的経験をしているのだろうか】
というテーマのものです。

内的経験って何?と思ってしまいますが、例えば・・・
・わたしが「痛い」と言ったときに感じている感覚と、他の人が「痛い」と言ったときに感じている感覚は本当に同じ?
・自分が「赤」と言って指している色は、本当に他の人も同じ色に見えている?

よく考えてみると、これって実際本当にいっしょかはわかりませんよね。
その人の内的経験はその人しか感じられない。
トマトやポストの色が「赤」と教えられたものの、その人の目には青く見えているけど、それを「赤」と呼んでいるかもしれない。

言葉って物事の規則性から学ぶもので、実際の感覚と結びついているわけではない、ということです。

規則性というのは、
・みんな怪我をしたりして、表情が歪んでいるときに言う言葉→痛い
・トマトとポストに共通する色→赤
みたいな感じですね。

こんなこと今まで考えたことがなかったので、目から鱗でした。
た、たしかに・・・!!と思いました(笑)
こういう発見は本当におもしろいですねー!!

他にもいろいろおもしろいものや、考えたことがないものが出てくるので、ちょっとずつ読みながら自分でもあれこれ考えてみるのがオススメです。
自分の中で新たな気づきがあるかもしれませんよ〜!